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「ノリキさん、いい話があるんだけど」
タイの山奥でビルマ陶磁を買い付けていた時、
山岳民族の中でちょっと目端の利く男が声をかけてきた。
この辺の人は結構素朴で正直な人たちが多い。
だから彼の話も頭から信じ込み、
何か良いものでも探してきたのかなと思って耳を傾けた。
「何があるの?」と聞くと、
「昔の墓があっていろんなものが埋っているところを知っている」
と言うのだ。
僕はこの辺りからたくさんの古陶磁が出ているのを知っていたので
そんなもの一つだろうと思い、
「それ誰かに言った?」と聞いた。
「まだあなただけ」と囁くように言うのだ。
「じゃあこれからすぐに行こう」というと
「明日にしてくれ」と言われた。
その日は国境の町タークまで引き返し、
翌朝早く彼の家へ出かけて行った。
すると3人の目つきの悪い男が
一緒に行くから車に乗せてくれと同行を求められた。
どこまで行くのと聞くと、
「この先1時間ほどの場所に品物を置いてある倉庫がある」
と言うのだ。
この話どこか焦げ臭い匂いがする。
始め昔の墓があって色々な物が埋っていると彼は言ったのだ。
それが1晩過ぎると
倉庫にストックしているという風に変わっている。
彼ひとりかと思ったら柄の悪い同行者を2人連れてきている。
僕は嘗てこれに似た話で大変な取引に巻き込まれたことがある。
山深いビルマ側の村に入ってしまい
十人ほどの男達に取り囲まれ山刀で散々に脅されたことがあった。
欲が絡むと人は自分に良い方に良い方に考えてしまい
失敗するようなことがある。
相手の話をしっかりと聞いて
言葉を常に分析しながら物を見ると言うことが大切だ。
骨董でも欲しいものや安いと思うものには
結構この種の話があって、失敗することが多い。
陥りやすい話には必ず自分の思い込みがある。
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