島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。

第163回

コバンザメ商法―やってみよう小さな美術館
源内焼南北アメリカ地図皿(江戸中期)

多くの作品中でいささか忘れられているものに、
彼が情熱を注いで作り上げた陶磁器『源内焼』がある。
彼が幕府に具申した陶器工夫書が今も生家に伝わっている。
それを読むと、彼の情熱がひしひしと伝わってくる。

陶器工夫書の一説
------------------------------------------------

揖斐十太夫様御代官所
肥後の国、天草郡深絵村産
1、陶器の土 一包
この土天下に並び無き上品に御座候。
伊万里、唐津、平戸焼など皆この土を用いております。
伊万里や唐津は日本国中に広くいきわたっている。
平戸焼などは将軍に献上されており、
その為この土は自由に売買できない。
中略 ・・・・・・・
伊万里や唐津の職人たちは
古くからの覚えたことだけで新たに工夫をしていないので、
焼物も自然と下品になっている。
天草の土は中国や和蘭の焼物の土より抜群によいので、
工夫さえすればよいものが作れる。
日本人は外国のものを尊び、高価で買い求めている。
もし日本の陶器が外国より良いとなれば皆、日本のものを用いる。
そして外国の陶器に金銀を費やすことも無くなる。
さらに幾らでもある我国の土をもって
海外より金銀を得ることもできるので国の利益にもなる。
           明和8年辛卯5月  平賀源内(印)

------------------------------------------------

と概略述べている。
閉ざされた社会の中でも源内は広い視野を持っていた。
さて、十年ほど前は、
こんなに価値のある源内焼の中皿が1枚10~20万円で買えた。
良い物と悪いものの区別がまだはっきりとせず、
わくわくするような優品が
思わぬ安値で入手できることもたびたびあった。
買った作品を手にとっていつまでも眺めていたものだ。
一年ほどで50点くらいの源内焼が手元に集まってきた。
骨董の現場で
よいものと悪いものの区別がはっきりと付かない時期は
買い時といわれている。
殆どの人がまだ手をつけてないからだ。

                      (続く・・・・)