初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第56回

商品学(タイ編)

3. タイの仏像 贋作の微笑み(II)
 
 


13世紀末から15世紀にかけて、

スコータイ朝はほぼ今のタイ国の領土を

支配するようになると、

セイロン島から仏教を将来した。

顔は卵形で、しなやかな美しい体型の

仏像を製作するようになる。

国力が充実したのか、

かなり大型の黄金仏なども

このとき作られている。

現在バンコクのワット・トライミット

(寺院)にある黄金仏などは

この時代に作られたものだ。

高さ3メートル、重さ5.5トンの

巨大な黄金仏は金の純度が

60数パーセントあるといわれ、

黄金の時価評価に直して100億円を

超えるものといわれている。

この仏像はスコータイの拝辞にあったと

言われ、全体が漆喰でカバーされていて

1953年、大嵐の際にクレーンが当り、

剥落した漆喰の下から

ギラリと光る黄金の肌が発見され

バンコクに運ばれたといわれている。

これほど大きな黄金仏を作り上げた

スコータイ時代は

タイの歴史の中でも飛びぬけて

強力な王国であった。

従って仏教美術の様々な作品は

優美な作品が多い。

タイの人々はこの時代の作品を好み、

ちょっとした仏像でも結構高価である。

ちょうど我々日本人が

平安、鎌倉の仏教美術を

好むのと似ている。

ついで、14世紀後半から

17世紀はじめ頃まで

過剰な装飾を施したアユタヤ仏が

生まれる。

15世紀頃はスコータイの影響

を濃厚に受けているが、

16世紀以後は

宝冠を頂いた独自の形を

持つようになってくる。

タイでは国立博物館や

地方の美術館に行っても

展示品の70〜80%は仏像だ。

その他仏教関連の美術品を加えると

展示品の殆ど全てが仏教美術に

関するものだ。

それだけにタイの仏像や関連美術品は

優れたものが多い。

タイ南部には7〜9世紀頃の

シュリビジャヤの作品があり、

東北部にはクメールや

ダヴァラヴァティの

7〜9世紀頃のヒンドゥーや

仏教美術の作品がある。

また12〜13世紀にはロップリ時代と

呼ばれるクメール後期の

仏教美術がみられる。

それらの像の魅力はここでは

紹介しきれないが、

タイ国の人々は仏教を

厚い信仰心で守っている。

それだけに良い像は昔から結構

高価であって

なかなか海外に出にくい。

高さ15〜20cmくらいの

コンディションが良い

14世紀頃のスコータイ仏など

100〜200万もする。

40〜50cmぐらいのモノになると

強気のディーラーは

1000〜1500万くらいの値をつけるのだ。

日本でもちょくちょく店頭で見かけるが

殆どの作品がコピーか

コンディションの悪いものだ。

気をつけよう。

また持ち出しも厳しい制限が

課せられている。

 

   
14世紀 
スコータイ仏
   
7、8世紀 
ダヴァラヴァティ仏立像