島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第96回
商品学(チベット・ネパール編)
ネパール・チベットの金銅仏
絶対儲かる骨董アイテム、今チベットが面白い
 
チベットターラー16世紀


ジャジャ~ン!
今これほど期待が持て楽しい骨董のジャンルはない。
インドで生まれた仏教は
始め仏陀を菩提樹や聖壇で表した。
紀元1世紀ごろガンダーラにおいて
始めて仏陀を人間で表現した。
仏教はさまざまな発展過程を経て、
ネパールやチベットに伝わった。
そこでは鋳金によるラマ教の諸尊像がつくられた。
諸尊像の時代ごとの様式を述べてみよう。

古いものは11~13世紀ごろのもので、
鍍金が残っているものは少なく
ブロンズの肌が赤黒く光っている。
耳飾りや複雑な装飾部分には、わずかに鍍金が残っている。
顔立ちもインド人にそっくりで目が非常に大きい。
観音像などは胴部分が括れ、腰が大きく肉感的である。
この時代のものは遺品も少なくとても高価である。

14、15世紀になると
菩薩像などは幾分東アジア的になり、
馴染み易い顔立ちになる。
これはモンゴルやそれに続く明の影響が
チベットやネパールにまで伝わったからだ。
像は多臂多顔となりそれに動きが加わってくる。
円空仏に代表される素朴な造詣の対極の像である。
人間の技巧がこれほど繊細に注意深く展開された仏像は
他に類を見ない。
それ故素直に美しいと感じてしまう。

チベット・ネパール仏の専門家は日本にはまだ少ない。
これから骨董屋をやるなら
このジャンルを徹底してやってみれば道は開けるだろう。
もちろん僕もやる。
それに秘密だが中国のあるところから
かなりな数がまだ出てくるみたいだ。
一度クリスティーズサザビーズ
Indian & Southeast Asian Arts 部門を
覗いてみることをお薦めする。
コレクターの立場から見ても
距離が離れているだけにエキゾチックで
インテリジェンスを刺激するアイテムだ。